見る前に渡米

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僕がまだ大学生だった頃。
 
僕は一応、外国語を専攻していたこともあって、海外、とくにアメリカへの憧れが強くて、夏休みを利用して、友達とアメリカにいっしょに行こうという話になった。友人は高校時代に交換留学の形で渡米経験があったが、僕は渡米どころか、まったく初めての海外。
 
当時、好きでよく見ていたハリウッド映画の中では、連日、街中で銃撃戦が行われ、若者は全員ドラッグをきめてラリっている国だ。そこに旅行しようとする緊張感たるはなかった。今でこそ笑い話になるけれど、旅行前に遺書を書くべきかも、ほんとうに悩んだくらいビビってた。
 
でも、友達と大学の帰り道に相談に行った旅行会社で、女性社員は僕らの背中をあっさりと押してくれた。
「みんな行ってるから」
「行けば何とかなるって」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
大学の先輩のような感じに。
 
それは、その人の営業スタイルだったのかも知れないし、その人の好きな旅行のスタイルだったのかも知れないし、実際のところはよくわからないし、どっちでもいい。
 
その後押しに勇気づけられ、乗せられ過ぎた僕たちは、長距離列車のパスと、初日の宿泊先の予約だけで、アメリカを東から西へ横断することとなった。当時は今ほどインターネットに情報もあふれていなかったし、本や雑誌を中心に、事前に調べておくにもいろいろ限界もあった。だからこそ、僕らはまずは現地に行ってみるしかなくて、到着して、いろいろと聞いて、調べていくしかない旅は、とても刺激的でワクワクに満ちていた。
 
僕は今でも、あのときに感じた気持ち、もしくはそれ以上の気持ちを感じたくて、ちょこちょこと出かけているんだと思う。
 
便利すぎる世の中で、いろんなことを事前にたくさん調べて、ほぼほぼ概要もわかって何かをする。事前に映像や写真で、バーチャルに見てしまったものを、現実で追体験することは、本来の感動もずっとずっと小さくしてしまう。もしくは行った気になって、やった気になって、実際にはやらなくて本質がよくわかっていなかったり。
 
だから、ごちゃごちゃ考えたり、ごちゃごちゃシミュレーションばかりしてないで、まずは行ってみることから始めるのがいいんだと思う。もちろん、旅行だけの話でもなくて、なんでも、まずはやってみることから始まるんだなと思う。
 
だから、見る前に跳べ。