35歳になって



  先日、35歳になった。

 20歳になったときは、たぶん、あまり実感がわかなかった気がする。大人になることが少し嫌で、もう少し10代でいたいような感じだったと思う。25歳になったとき、だいぶ大人になったなと思ったが、まだまだ実感なんてわかなかった。30歳となったとき、もう大人でいなくてはならないなと思った。それと同時に、このままでいいのだろうかと妙に焦った。何もしないまま、結局三十路になってしまったんじゃないかと、気持ちはうわずってばかりいた。何かをしなければ、何かをしなければと、いつも気持ちは浮き足立っていた。

 そして、35歳になった。いつか思い返してみると違うのかもしれないが、死への恐怖が突然僕を襲い始めてきた。これまでの人生は、もちろん、簡単には語り尽くせないくらい、たくさんのことがあった時間ではあった。だが、しかし、あっさりと人生の折り返し地点を迎えたように感じられ、僕のいなくなった後の世界のことばかりを考えていた。

 これまで何をしたとか、何もしなかったとか、そういうことを超えて、もう残りが半分しかないというただその事実。今は少し時間が経ったことで、気持ちはだいぶ落ち着いてきてはいるが、やっぱり、死に向かって僕は確実に歩み寄っている。前よりもずっと、ずっと。

 そして、気がついてみれば、訃報を聞いて知っている人なんて、ほとんどいなかったはずなのに、今や、ともに同時代を生きてきた、知っている人たちばかりだ。

 節目を迎えて、その年齢、年齢で感じる気持ちは全然違うけれど、結局、後悔のないように一日一日を大切に、一生懸命に、ただ生き抜くことしかないできないことは、今も昔も、ずっと変わらない。今日も、後悔のない一日を送れたのか、僕は?